栂・地栂(ツガ・トガ)について
栂(ツガ・トガ)と言えば、最近では防腐土台の原料になったり窓枠やドア枠のペンキ下地に使われているイメージですね。
とりあえず柾目で節が無く明るく安価な材料は決まってツガ。節が有っても良いのでとりあえず安価な角材と言えばツガ。
なんでもよければツガと言うイメージが強いです。
設計図書でもツガはよく目にしますが使いまわしの箇所に使用されている感が高いです。
コストパフォーマンスが高く白木で柾目の木材となると実際なかなか国産材ではそろわないのが現状です。 柾目材は、ある程度大径木でしか製材する事が出来ません。 特に窓枠やドア枠などに使用する木材は、カップ(Uの字)しやすい板目より、カップし難い柾目が好まれます。 ツガは日本における柾目材の供給を補う重要な役割を果たしています。
しかし、ツガにも欠点があります。 乾燥を間違えるとシミやアオが入りやすかったり、ミネラルストリークという黒い筋が入ったりします。 また、ネジレが起りやすいということもありなかなか節無し角材で一級品という冠はもらえませんでした。 少し腐りやすいイメージも拭いきれません。 これは国産の桧がツガと同じように白いので比較対象にされてきたからかもしれませんね。
現在日本に輸入されているツガは、現地ではヘム・ファー・ノースと言ってウェスタン・ヘムロックとアマビリス・ファーの両樹種混合の樹種郡の名称です。
少しややこしくなってきました。
ウェスタン・ヘムロック Western Hemlock
学名:Tsugaheterophylla(Raf.)Sarg.、
マツ科ツガ属
アマビリス・ファー Amabilis Fir、
学名:Abies amabilis (Dougl.) Forbes、
マツ科モミ属
ツガ属とモミ属では、そのそも木が違うのでは?
その通りですが、目詰まりや比重、色合い、生育環境などが似通っていることからヘム・ファー・ノースとされています。
日本での使用状況を考えてみてもウェスタンヘムロックとアマビリス・ファーは区別しなくても良いという判断だと思います。
実際は、材木屋さんが見ると一目瞭然の様に区別できますが一般の方がペンキ下地などにどちらが使われていても気が付かないと思います。もちろんウェスタンヘムロックとアマビリス・ファーを分けたり、ウエスタンヘムロックのオールドグロス(高齢樹)のみを選別して最高級材として販売されている材木屋さんもあります。
と、ここまでは最近日本に輸入されているカナダツガのお話でした。
多くの方々が、ツガに対しては以上のようなイメージをお持ちだと思いますが日本にも国産の栂・地栂(ツガ)は存在しています。
ツガ属は、世界に9種類あると言われアジアに5種類、北米に4種類の分布が確認されています。
日本の地栂(ツガ)は、ツガ(Tsuga sieboldii)とコメツガ(Tsuga diversifolia)の2種が生育しマツ科ツガ属にはいります。
カナダツガにおけるウェスタン・ヘムロックの仲間になります。
コメツガは、葉が米粒に似ているからこの名前が付いたと言われています。
ツガの葉
九州から四国、本州南部に生育し、北海道には生育していません。
ほぼ植林は存在せず天然林であり、標高の高い急斜面や尾根で生育するため切りだしたくてもなかなか伐採できないのが現状です。
今では幻と言われるくらいに良材は減ってきました。
木質は、日本の針葉樹のなかでは非常に硬く、経年の変色でどんどん赤くなっていきます。関西では、栂普請として桧普請よりも格上だとされています。実際に長年使用した柱や梁をみると違いは明確です。
とはいえ、地栂(ツガ)にも木材となると良いところばかりとは言えません。
地栂は、非常に締まりやすいのでそのことを加味して加工する必要があります。かなり木材としては、暴れん坊だと思っていた方が良いかもしれません。カナダツガと同じようにシミやアオが入りやすいので保管にも気を使います。
カナダツガと地栂を並べてもほとんどの人が異なる木だと判別できるでしょう。どちらが良い木材だとはいう事はなく、用途で使い分ければ良いかと思います。
ウェスタン・ヘムロック
- 学名:Tsuga heterophylla Sarg.
- 別名:ベイツガ、ベイトガ、カナダツガ、ヘム・ファー・ノース
- 分類:マツ科ツガ属
- 原産・分布:北アメリカ大陸
- 用途:建築材、構造材、造作材、建具材、箱材、パルプ
アマビリス・ファー
- 学名:Abies amabilis
- 別名:ベイツガ、ベイトガ、カナダツガ、ヘム・ファー・ノース
- 分類:マツ科モミ属
- 原産・分布:北アメリカ大陸
- 用途:建築材、構造材、造作材、建具材、箱材、パルプ
コメツガ
- 学名:Tsuga Diversifolia
- 別名:ヒメツガ、クロツガ
- 分類:マツ科ツガ属
- 原産・分布:本州、四国、九州
- 用途:建築材料、構造材、造作材、フローリング
ツガ
- 学名:Tsuga sieboldii Carriere
- 別名:トガ
- 分類:マツ科ツガ属
- 原産・分布:本州、四国、九州
- 用途:庭木、建築、楽器、船舶材、パルプ